電解研磨推奨条件

以下のような電解研磨の実験に基づく推奨条件が得られました。


推 奨 条 件

1.被削材

加工対象加工目標前加工熱処理
平面曲面, ステンレス鋼, SUS430
脱スケール



2.加工条件

◆ 加工条件 ◆


・加工レベル:—

電解条件
電極材料名黄銅
電極形状1×1cm
電極その他
印加電圧22.7V
電流60A
電流密度
加工間隙0.2mm
電解溶液材料NaNO3
電解溶液濃度20wt%
液流量0.8l/min
液温度
pH
加工時間0.03s

◆ 装置図 ◆



装 置



分析テーマ「ステンレス材による脱スケール」

加工に関わる実験グラフと解説

ステンレスの違いによる脱スケールにかかる時間
フェライト系ステンレス鋼のSUS430では、素材表面のスケールを0.01秒でほぼ完全に除去しているのに対し、オーステナイト系のSUS304の場合には、約0.05秒を要している。また、脱スケール後に電解を継続した際の特性をみると、SUS304では秒オーダーの電解を継続してもステンレス鋼本来の金属光沢が維持されるのに対し、SUS430の場合には、アノード電解電流による酸化皮膜(スケール)の形成が次第に盛んになり0.04秒の時点においてかなり顕著になる。なお、この酸化皮膜は上述の短時間電解で速やかに除去されるので、SUS430で長時間の電解(大きな除去量)を必要とする場合には、オンタイム0.03秒以下でのパルス電解を行えばよい。

0s:未加工


0.01s:地肌が僅かに露出


0.02s:地肌が僅かに露出


0.03s:少しスケールが残っている


0.04s:ほぼスケールがとれた


0.05s:完全にスケールがとれた


0s:未加工


0.01s:すこしスケールが残っている。表面は白っぽい


0.02s:ほぼスケールはとれた。表面は白っぽい


0.03s:スケールはとれた。表面は白っぽい


0.04s:少し黒くなった

a.SUS304
b.SUS430

図1.ステンレスの違いによる脱スケールにかかる時間


SUS430における加工時間と表面の変化
本実験の場合、0.09秒連続電解では黒い酸化皮膜が形成されているが、0.03秒を3回断続すれば皮膜のない金属光沢面(写真では反射が強いため黒っぽく見える)が得られている。

0.03s×3回:スケールもとれて光沢がでている

0.09s連続電解:表面が黒くなっている
SUS430

図2.SUS430における加工時間と表面の変化


除去深さと加工時間の関係
SUS304とSUS430における以上のような電解脱スケール特性の差異は、冷間圧延焼鈍工程で形成されるスケールの組成がこれら2つの鋼種において異なることに起因する。SUS430鋼の焼鈍スケールはコランダム型(M2O3:Mは金属元素、Oは酸素元素を示す)酸化物であり、その主成分はCr2O3 およびFe2O3である。一方、SUS304鋼の焼鈍スケールにはコランダム型のほかスピネル型(M3O4)が含まれ,その主成分はFe3O4,Mn3O4およびFeCr2O4である。また、こちらのコランダム型にはSUS430鋼の場合の2つの酸化物の他に(Cr,Fe)2O3が含まれる。SUS304鋼スケールの最外層はスピネル型とコランダム型酸化物の混合層であり、その下にコランダム型酸化物層がある。混合物層が厚いため、SUS430の場合よりも脱スケール時間が長くなる。
実験事例データリストの表示

図3.除去深さと加工時間の関係





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