電解研磨推奨条件

以下のような電解研磨の実験に基づく推奨条件が得られました。


推 奨 条 件

1.被削材

加工対象加工目標前加工熱処理
平面曲面, アルミニウム(A5052P), アルミ合金JIS5000台(Al-Mg系合金)
形状精度



2.加工条件

◆ 加工条件 ◆


・加工レベル:—

電解条件
電極材料名ステンレス
電極形状280mm diameter
電極その他
印加電圧
電流
電流密度11.284mA/cm2
電解溶液材料NaNO3
電解溶液濃度3.85wt%
液流量3L/min
pH
加工時間
砥粒研磨条件
圧力2.2kPa
回転数170rpm
砥粒材質Colloidal SiO2
砥粒径0.07um
砥粒量
研磨材研磨パッド軟質二重構造タイプ
粒度番号
研磨材径

◆ 装置図 ◆



装 置



分析テーマ「オスカー式研磨機によるアルミニウム材の電解砥粒研磨」

加工に関わる実験グラフと解説

電流密度と研磨速度の関係
3種類のアルミニウム材について、電流密度と研磨速度の関係を図に示す。A5052PとA2017Pに電流密度0.5A/cm2付近で研磨速度に極小値が見られた。電流密度1.0A/cm2付近では電流過剰によるピットが発生しはじめ、このピットは電流密度を大きくすることでは除去できなかった。また電流密度による電流効率を算出したところ、やはり電流密度0.5A/cm2付近で極小値が見られた。A5052Pは電流密度を変化させたときの表面粗さの変化が安定していた。A2017P・A6061Pについて、電流密度を変化させたときの表面粗さにばらつきが生じた。これは電流密度以外の加工条件が適当でなかったためと考えられる。電流密度0.5A/cm2付近ではどの試料も表面粗さが小さくなった(A5052Pで10nmRmax程度)。
実験事例データリストの表示

図1.電流密度と研磨速度の関係


電流密度の変化に対する表面形状(0A/cm2加工面)
図はA5052Pについて電流密度0A/cm2の表面写真を示す。この電流密度では浅いピット状の表面荒れが発生した。



図2.電流密度の変化に対する表面形状(0A/cm2加工面)


電流密度の変化に対する表面形状(0.62A/cm2加工面)
図はA5052Pについて電流密度0.62A/cm2の表面写真を示す。この電流密度では表面荒れがほとんどなく、良好な鏡面が得られた。



図3.電流密度の変化に対する表面形状(0.62A/cm2加工面)


電流密度の変化に対する表面形状(0.78A/cm2加工面)
図はA5052Pについて電流密度0.78A/cm2の表面写真を示す。この電流密度では電流過剰が原因と思われるピット(深さ数um)が多数発生した。また、平坦度をA5052P(30φ)についてレーザー干渉計で測定した結果、P-V値で1um以下の値を得た。研磨速度・電流効率・表面性状に極小値が見られた原因について以下のように考えられる。電流密度が低いとき(0.5A/cm2以下)の不慟態皮膜は非常に薄いため、砥粒はアルミニウム母材を直接擦過し除去単位が大きくなる。また電流密度が適正なとき(0.5A/cm2付近)は不慟態皮膜が厚く成長し、アルミニウム母材を保護すると考えられる。この場合、砥粒による除去単位は小さくなり、表面粗さが小さくなると考えられる。



図4.電流密度の変化に対する表面形状(0.78A/cm2加工面)



結論
オスカー式研磨機を用いた電解砥粒研磨実験において以下の結果が得られた。1)A5052Pに関して0.5A/cm2付近の電流密度で10nmRmax程度の表面粗さを得た。2)研磨速度と電流効率の極小値における電流密度はほぼ一致し、その領域では表面粗さも小さくなった。



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