ま と め
◎アルミニウム合金鋳物AC3A(鋳造)

1.実験の目的

Al2O3系セラミックスが適用でないAl-Si合金について、試作セラミックス(TiN系)工具での高速切削性能の検討。

2.被削材

Alに11%〜14%Siを加えた合金はシルミンと呼ばれ、共晶合金である。鋳造性がよく小型内燃機関の部品に用いられ、軽合金として用途が広い。
  表1に使用したアルミニウム合金の化学成分を示す。

3.工具材

1に使用したセラミックス(TiN系)および比較用工具材・超硬合金(WC-CO系)の成分と機械的性質を示す。後者の抵抗力は前者と比較して著しく高いが、硬度はわずかに低い。前者は、九州工業技術試験所で開発された。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷状態

セラミックス(TiN系)での200m/min,300m/min,400m/min の切削速度における切削では、切削時間1分後で刃先にチッピングを生じた。超硬合金では切削速度、切削時間の増加と共に、漸次摩耗が進行している。

(2)工具摩耗進行曲線

1に超硬合金工具での切削時の逃げ面摩耗の進行状態を示すように、漸次摩耗が進行している。特に切削速度200m/minで、寿命は著しくのびている。
  セラミックスでは、切削速度200m/min,300m/min,400m/minで、1分切削後に巾0.7o前後のチッピングを生じた。

 
(3)切削仕上げ面

2にアルミニウム合金(Al-12%Si)の仕上げ面を示す。仕上げ面は切屑溶着のため非常に悪い。

5.結論

(1)この試作セラミックス(TiN系)工具は、チッピング欠損が発生し易いため、アルミニウム合金(Al-12%Si)の切削には適していない。

(2)超硬合金(WC-C0系)工具のアルミニウム合金に対する適性切削速度は200m/minと思われる。

(3)仕上げ面が非常に悪いので、実用面では工具の形状、切削油等の検討を要する。