ま と め
◎純チタンTi(焼もどし)

1.実験の目的

焼結CBN(CBN系)の純チタンTi(焼もどし)に対する切削性能の検討。

2.被削材

チタン及びチタン合金は、耐食性や軽量高強度を売りものに宇宙、航空関係や原子力関連などに使用され出した材科であるが、被削性から見ると、難削材の最たるものである。それは、著しく熱伝導性が悪いこと。密度小で工具と切屑の接触域が非常に短く狭い所に切削力が集中し刃先が高温になること。高温下で酸化物、炭化物、窒化物の表面層を形成し工具を著しく摩耗すること。化学的親和性が高く、工具を化学的に侵すこと。溶着が起こりやすいことである。
  通常の切削には、超硬K10相等が推奨される。表1に使用した純チタンTi(焼もどし)の化学成分と機械的性質を示す。

3.工具材

1に使用した焼結CBNおよび比較用工具材のサーメット(TiN-TaN系)セラミックス(Al2O3, Al2O3-TiC系,Si3N4)の成分と機械的性質を示す。
  焼結CBNは硬度は高いが抗析力は一番低い。
  図1に切削前の工具すくい面の状態を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷状態

図2は純チタン切削時の工具損傷状態を示す。

・焼結CBN(CBN系)
  焼結CBNは、切削速度を比較工具より上げているが100,150m/minでは摩耗量少く均一摩耗である。200m/minでは、均一摩耗であるが摩耗幅が大きくなる。全般的に初期切削域から被削材が刃先に溶着する。

・サーメット(TiN-TaN系)
  50,100m/minでは溶着は見られるが比較的摩耗は少ない。150m/minでは逃げ面摩耗も増大するがクレーター摩耗が大きく発生する。高温下における化学摩耗の増大と思われる。

・セラミックス(Al2O3)
  50〜150m/minまで初期にチッピングが発生し低速では不規則摩耗、高速では均一摩耗の形態である。
  被削材の溶着は比較的少ない。

・セラミックス(Al2O3-TiC系)
  50m/minでは刃先の摩耗は少なく安定しているが、横逃げ面境界部のすくい面摩耗が大きく先生する。100m/minでも同様の傾向。
  150m/minでは逃げ面摩耗も増大するが境界部のすくい面が増大し、切屑の圧着が見られる。

・セラミックス(Si3N4)
  50,100m/minでは不規則なチッピングと境界摩耗が顕著である。150m/minは境界摩耗は少なくなるが逃げ面摩耗は増大する。全体的に摩耗量は他の材種より大きい。


(2)工具摩耗進行曲線

3に純チタン切削時の横逃げ面及び前逃げ面の工具摩耗の進行状態を示す。
  焼結CBNは、摩耗量が他の材種と比較すると4〜5倍少なく安定している。比較用材種では、あまり変化はないが50〜100m/minではセラミックス(Al2O3)が摩耗(チッピング合む)が大きい。
  150m/minではあまり変化はない。

(3)切削仕上げ面

4に純チタンの切削仕上げ面を示す。
  焼結CBNとサーメット(TiN-TaN系),セラミックス(Al2O3-TiC系)が良好でRmax=3〜6μm前後である。セラミックス(Al2O3系,Si3N4系)は2倍以上の粗さとなる。

(4)切屑

図5に純チタンの切屑を示す。形態は不規則のもつれ型となる。焼結CBNとサーメット(TiN-TaN系)は銀白色であるが、セラミックスの場合には切削途中で黄色を帯びノコ刃状の切屑が発生してくる。

5.結論

(1)焼結CBNは100,150,200m/minにおいて3分切削後VB=0.05o以下で安定しており表面粗さも良好である。

(2)サーメットは50,100m/minでは焼結CBNに次いで摩耗が少ないが150m/minでは急激にクレーター摩耗が増大する。
 表面粗さは焼結CBNと同様で良好である。

(3)セラミックス(Al2O3系)は初期にチッピングが発生しており摩耗もセラミックスの中では一番大きい。仕上げ面粗さも大きい。

(4)セラミックス(Al2O3-TiC系)
  50,100m/minではセラミックスの中では摩耗が一番少ないが、境界部のすくい面(切屑流出部)の摩耗が大きくなる。150m/minでは、逃げ面摩耗の増大と境界部すくい面の摩耗が増大し切屑が溶着する。仕上げ面は良好である。

(5)セラミックス(Si3N4系)
  50,100m/minでは逃げ面摩耗は少ないが境界摩耗が大きい。
  150m/minでは境界摩耗は少ないが逃げ面摩耗が増大する。

●焼結CBNは比較的安定しており150〜200m/minの範囲で摩耗量の程度により適正値を選択する必要がある。サーメットは、100m/min以下が適正切削速度であると推定される。セラミックスでも、100m/minが適正切削速度であると推定されるがAl2O3系はチッピング及び摩耗量が大きい。
6.備考

(1)セラミックス(Si3N4)の切削では切削中に被削材表面にバリが発生した。