ま と め
◎ニッケル基耐熱合金インコネル600 (固溶化処理)

1.実験の目的

焼結CBN(CBN係)のインコネル600生材に対する切削性能の検討。

2.被削材

インコネル600は超高温度(500  以上)で使用に耐える合金でNi-Crを主体とする耐熱材料である。主としてガスタービン、ジェットエンジン部品材料として使用される。
  表1に使用したインコネル600の化学成分とその機械的性質を示す。
  

3.工具材

1に使用した焼結CBN(CBN系)、比較用工具材超硬合金(WC-CO系,WC-CO-TiC系)、コーティング(Al2O3,TiCN系)の成分と機械的性質を示す。焼結CBNは他の工具材に比較して、硬度は著しく高いが抗折力は非常に小さい。
  1に切削前の工具すくい面の状態を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷状態

2はインコネル600切削時の工具損傷状態を示す。
  使用した各工具ともV=25m/minから150m/minにおいて、工具逃げ面は異常摩耗を呈し切削初期から切刃部からすくい面にかけてチッピングや欠損を起こした。これらの現象は切削速度が速くなるほど顕著である。
  特に、焼結CBN工具は他の工具材と比較して欠損が著しく靭性に劣っている。
 

(2)工具摩耗進行曲線

3はインコネル600切削時の横逃げ面及び前逃げ面の工具摩耗の進行状態を示す。   
  V=25m/minで超硬合金、コーティングとも逃げ面の摩耗幅進行が著しく、この中でもコーティング(Al2O3,TiCN系)はこの切削条件に不向きと思われる。V=50m/minで超硬合金とコーティングがそれぞれの摩耗領域を形成している。
  V=100m/minで横逃げ面摩耗幅に工具間の差が現われコーティングについては、V=50m/minより摩耗幅を小さくしている。
 

(3)切削仕上げ面

4にインコネル600の切削仕上げ面粗さ経過線図を、図5に仕上げ面粗さ線図の一例を示す。
  仕上げ面粗さ線図が示すように切屑の溶着、離脱の影響を受け仕上げ面粗さが悪い。特に、焼結CBN工具は顕著に現われている。一見切削条痕が鮮明で粗さが一定と感応しても、理論粗さ値1.5μmより大きい値を示している。

(4)切屑

6にV=100m/minにおける各工具の代表的切屑を示す。
  CBN工具は不規則連続カール状から不規則むしれ形状の短い切屑となる。超硬合金は規則的連続カール状切屑、コーティングは規則的連続カール状のもつれ形切屑となっている。
 

(5)切削抵抗

7に各工具の切削速度の切削抵抗の推移を、図8には切削抵抗線図(主分力、送分力、背分力)の一部を示す。
  各工具共、切削抵抗値は近似傾向にある。その中でもコーティング工具が多少低い傾向を示している。又、切削速度が速くなるほど切削抵抗は小さくなっている。

5.結論

(1)焼結CBN工具は他の工具と比較して靭性が著しく劣り、切刃部の欠損が著しくインコネル600生材に対する当切削条件では不向きである。

(2)超硬合金、コーティング工具の適正切削速度は、当条件については50〜100m/minの範囲にあると推定される。