1.実験の目的

CBN工具の耐熱、耐食材料に対する切削性能を把握するとともに耐熱、耐食材料、切削条件を明らかにする。

2.被削材

　表1に使用したインコネルX750の化学成分と機械的性質を示す。

3.工具材

表1に使用したCBN・TiNサーメットセラミックス(3種類)の成分と機械的性質を示す。
　 図1に切削前の工具すくい面の状態を示す。

4.実験結果と考察

(イ)セラミックス(Al₂0₃-TiC系)
　　切削速度25m/minでは1分40秒でチップが破壊し再試験を行った。
　　切削試験は1分で中止、切削状態が非常に悪く前回と同じく破壊する可能性ありと判断し2分め以降は中止。

(ロ)焼結CBN(CBN系)
　　摩耗による損傷というより、溶着金属にむしりとられたような形状面である。

(ハ)セラミックス(Si₃N₄系)
　　チップに激しく溶着し刃先の欠損、ダレがあり切り粉も不規則である。

(2)工具摩耗進行曲線

図4に逃げ面摩耗、図5に境界摩耗幅を示す。
　 寿命はサーメット(TiN-TaN系)、焼結CBN(CBN系)、セラミックス(Si₃N₄)の順であり、セラミックス(Al₂0₃系)、セラミックス(Al₂0₃-TiC系)は切削時間1分で寿命に至る。
　 境界摩耗は切削速度の違いによる差異は小さかったが逃げ面摩耗は差異が大きかった。しかし25m/min,50m/minでは差異は小さい。
　 セラミックス(Al₂0₃系)、セラミックス(Al₂0₃-TiC系)の逃げ面摩耗幅VBは刃先破損のため測定できなかった。

(3)切削仕上げ面

図6に面粗さを示す。
　サーメット(TiN-TaN系)は切削速度が早い程面粗さが安定している。面粗さも摩耗曲線と同じでサーメット(TiN-TaN系)、セラミックス(Si₃N₄系)、焼結CBN(CBN系)の順に安定している。
　焼結CBN(CBN系)、セラミックス(Si₃N₄系)の切削面にかえりがみられざらざらしている。

切り粉の状態は各切削速度毎に変化が大きかった。連続した切り粉でも太かったり細かったり、又切り粉が急に細かく切れたりして不安定あった。

5.結論

(1)焼結CBN(CBN系)、セラミックス(Si₃N₄系)の摩耗形態は同じような傾向を示している。

(2)VB曲線より比較するとサーメット(TiN-TaN系)、焼結CBN(CBN系)、セラミックス(Si₃N₄系)の順で安全性が有り境界摩耗VN曲線も同様な傾向を示している。