1.実験の目的

試作セラミックス(TiCN-30TiB₂-1Ta₂C系)の機械構造用炭素鋼S45C焼ならし材に対する高速切削性能の検討。

2.被削材

機械構造用炭素鋼は、工業上の基盤的材料であり各種の部品や軸として使用されている。その切削における各種工具の適用切削条件の目安は、高速仕上げ切削ではAl₂O₃系セラミックス仕上げ切削では、サーメット、荒加工切削ではコーティング、比較的低速域での切削は超硬合金と位置づけられている。
　　表1に使用したS45C材の化学成分と機械的性質を示す。

3.工具材

表1に使用したセラミックス(TiCN系)および比較用工具材サーメット(TiN系)の成分と機械的性質を示す。前者は後者に比べて、硬度は高いが抗析力は大幅に小さい。図1に切削材の工具すくい面の状態を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷形態

図2はS45C切削時の工具損傷状態を示す。セラミックス(TiCN系は、普通に見られる横逃げ面の正常摩耗と異なり境界を最大とする不規則摩耗である。切削初期から中期にかけていずれの切削速度においても境界部から一部刃先にかけて微小チッピングが見られるが、刃先部の摩耗は少なく進行も遅い。
　　又、クレーター摩耗もほとんど発生していない。
　　サーメット(TiN系)は、200m/minでは境界部から刃先において一定の正常摩耗であるが、300,400m/minでは境界部を最大として刃先に向う三角形の摩耗形態になる。特に400m/minでは、急激に摩耗が進行している。

(2)工具摩耗進行曲線

図3にS45C切削時の横逃げ面及び前逃げ面の工具摩耗の進行状態を示す。セラミックス(TiCN系)は、400m/minでも切削時間30分後VB=0.1mm以下であり非常に優れた耐摩耗性を示している。しかし、境界摩耗は比較的大きく横逃げ面及び前逃げ面共に、200,300m/minではサーメット(TiN系)とほぼ同値である.サーメット(TiCN系)は、200m/min では切削時間30分後VB=0.05�oと安定しているが、300、400m/minになると急激に摩耗が増加する。

(3)切削仕上げ面

図4にS45Cの切削仕上げ面粗さを示す。全体的にセラミックス(TiCN系)の方が値が小さい。切削初期では、Rmax=5μm以下で除々に増加し30分切削後15μm削後の粗さになる。サーメット(TiN系)では、初期でRmax=7〜12μmで、VB=0.2mmのとき、15〜18μmなる。
　　形状としては、セラミックスの方がやや乱れた三角山であるがこれは刃先ノーズ部研削の悪さによるものと思われる。

5.結論