ま と め
◎ねずみFC20(鋳造)

1.実験の目的

試作セラミックス(Si3N4-7Al2O3-25SiC系)と市販コ一テイング(Al2O3系)の、ねずみ鋳鉄FC20に対する高速切削性能の検討。

2.被削材

ねずみ鋳鉄はCが、片状黒鉛の形状で存在している鋳鉄で、鋳造性、被削性が共に優れている。黒鉛が個体潤滑作用をもち、また油溜りとして役立つこと、熱伝導性がよいなどの理由で、鋳鉄は耐摩耗性が良好である。そのため一般機械部品に多く用いられる。表1に使用したねずみ鋳鉄FC20の化学成分と機械的性質を示す。

3.工具材

1に使用した試作セラミックス(Si3N4-7Al2O3-25SiC系)及び比較用コーティング(Al2O3系)の成分と機械的性質を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷形態

1は試作セラミックス(Si3N4-7Al2O3-25SiC系)及び比較用コーティング(Al2O3)の切削前と切削終了後の様子である。試作セラミックス、コーティング工具どちらも摩耗の様子は正常摩耗である。
  又、セラミックスの実験開始前写真にチャンファー幅のバラツキと切刃部のチッピングがみられる。しかしこの実験の工具摩耗には影響を及ぼしているとは思えない。

(2)工具摩耗進行曲線

2にFC20切削時の工具摩耗の進行状態をしめす。試作セラミックスではすべての切削速度で1分内にVB=0.2に達したのに対し、比較用コーティングは400m/minでも約5分切削可能であることがわかる。セラミックスもコーティング工具も工具摩耗の進行はクレーターの進行によって切刃部が幅の狭いエッジになり徐々に後退していくという経過を辿るようである。

(3)切削仕上げ面

3にFC20切削時の工具寿命曲線と表面粗さの変化をしめす。

5.結論

(1)試作セラミックス(Si3N4-7Al2O3-25SiC系)によるFC20の切削ではVB=0.2に到達するのに総ての切削速度で1分以内と良い結果を得られなかった。

(2)比較用コーティング(A12O3系)は安定した正常摩耗の進行を示しセラミックス(Si3N4-7Al2O3-25SiC系)より良かったが、前回行ったFC20切削時に好結果を得たセラミックス(Al2O3系)と比べるとやはりコーティングの方が劣った。