ま と め
◎ねずみFC20(鋳造)

1.実験の目的

試作セラミックス(TiN-30TiB2系)(以下TiN系セラミックスという)の、ねずみ鋳鉄FC20に対する高速切削性能の検討。

2.被削材

ねずみ鋳鉄FC20相当の市販デンスバー(φ80)で、表1に被削材の化学成分と機械的性質を示す。なお切削試験は、外径を約10mm程度削除後行った。

3.工具材

1に試作したセラミックス(TiN系)および比較用工具材セラミックス(Al2O3)(以下Al2O3系セラミックスという)の成分と機械的性質を示す。TiN系セラミックスはAl2O3系セラミックスに比べて坑抗力硬さ共に低いが、特に硬さが低い。図1に切削前のTiN系セラミックスのすくい面の状態を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷形態

2にFC20切削時の工具損傷状態を示す。TiN系セラミックスの逃げ面摩耗は微小チッピングにより摩耗が進行していき、中高の摩耗を示す。クレータ摩耗は切削速度が300m/minにおいては通常のクレータ摩耗を示すが、他の速度の場合はクレータ内にチッピングが起こり溶着物が付着する場合があり、クレータの幅は大きい。TiN系セラミックスの摩耗は溶着物が脱落するときチッピングを起こすことにより摩耗が進行する。 Al2O3系セラミックスの逃げ面摩耗は均一摩耗を呈し、クレータ摩耗も通常摩耗である。

(2)工具摩耗進行曲線

3にFC20切削時の逃げ面の工具摩耗の進行状態と、VB=0.2o付近のクレータ摩耗深さを示す。TiN系セラミックスは寿命が非常に短く、300および400m/minの場合はわずか0.5minで寿命となる。また300m/minの場合より400 m/minの時の逃げ面摩耗が小さい。Al2O3系の摩耗は前者に比らべゆるやかな摩耗を示し、通常摩耗で寿命にいたる。VB=0.2o付近におけるクレータ摩耗深さはAl2O3系セラミックスはほぼ均一であるが、TiN系セラミックスは不均一でクレータ深さはAl2O3系セラミックスよりも大きい。

(3)工具寿命

4に工具寿命曲線を示す。 Al2O3系セラミックの寿命方程式はVB=0.2oのときVT0.606=1571となるが、TiN系は変曲点を持つ。

(4)切削仕上げ面

5に切削仕上げ面あらさを示す。Al2O3系セラミックスの550m/minの場合は良い仕上げ面が得られている。

(5)TiN系セラミックス、Al2O3系セラミックスの性能比較

表2に表にして示してある。TiN系セラミックスのFC20に対する工具性能はAl2O3系セラミックスに比べてはるかにおとる。


5.結論

(1)TiN系セラミックスのFC20に対する切削速度は100m/min以下が適当と考えられる。

(1)Al2O3系セラミックスのFC20の切削に対する寿命方程式はVB=0.2mmのときVT0.606=1571となる。