ま と め
炭化けい素 SiC

1.実験の目的

焼結ダイアモンド(C系)の炭化珪素系セラミックスSiC焼結材に対する切削性能の検討。

2.被削材

 SiC系セラミックスは常圧焼結、ホットプレス、反応焼結、CVDなどの方法により製造される。高硬度、耐熱、耐摩耗、耐食性にすぐれているためガスタービン、ジェットエンジン、ディゼルエンジン、耐熱板等の部品長寿命化に大きな効果をもたらす。
  1に使用したSiC系セラミックスの特性を示す。

3.工具材

1に使用した焼結ダイアモンド工具の成分と機械的性質を示す。
  硬度は工具材の中で最高硬度である。
  1に切削前の工具すくい面の状態を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷状態

2はSiC切削時の工具損傷状態を示す。
  V=23, 55m/minで切削を行ったがいずれも1分以内に急激な摩耗が進行した。摩耗はノ一ズ部切れ刃部より逃げ面にかけ硬い粒子で引掻取られたような脆性破壊を現している。

(2)工具摩耗

V=23m/minは1分間の切削でノーズ面の摩耗幅が0.745o、V=55m/minは1.215oに達し、摩耗の進行は切削速度が速い側が大きく現われている。

(3)切削仕上げ面

3にSiCの切削仕上げ面粗さを、図4に切削仕上げ面を、図5に加工断面曲線を示す。
  4よりV=23, 55o/minで切削条痕が観察される。これらは微小クラックの集合による切削が進行した状況で55m/minの高速側では条痕が鮮明度を欠き脆性破壊の様を示している。
  図5よりV=23m,55m/minにおける切削の進行と工具の損傷状態がうかがえる。
 

(4)切削抵抗

6にSiC系セラミックス切削時の切削抵抗を示す。
  主分力はV=23m/minでは切削進行と共に多少増加傾向、V=55m/minについては切削直後、工具の損傷により切削抵抗の減少を呈する。
  送り分力、背分力とも前記と同じ傾向であるが、金属材料とは異なり背分力が大きい。切削抵抗の変動はV=23m/minよりV=55m/minが小さい。

5.結論

(1)非酸化系セラミックス(SiC系)の切削はきわめて難しい。

(2)断面曲線より低速域での切削性が考えられる。

(3)工具切刃にホーニングを施することにより寿命向上が考えられる。