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基本級(TN-F)取得までの実習例

〜ティグ溶接〜


ティグ溶接の実習準備

ティグ溶接/ステンレス鋼、薄板、下向き、裏板なし

溶接機 : ティグ溶接機/定格出力 200A
溶材 : Y308 溶加棒、径 2.0mm
シールドガス : Ar (アルゴン)
母材 : 材質はステンレス鋼 SUS304、厚さ 3mmの平板

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実習順序

1) ビードオンプレート溶接: ビードオンプレート溶接で溶加材なしと溶加材ありについて溶融池の観察と運棒を習得する
2) 初層溶加材なしで突合せ溶接: 初層の溶加材なしで、突合せ溶接を実習する(裏波形成が容易)
3) 基本級TN-Fの溶接(初層溶加材あり) 受験種目である基本級を実習する

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1)ビードオンプレート溶接

準備するもの

母材: 材質はステンレス鋼SUS304、板厚 3x 幅 100x長さ 150 (mm)の平板
溶材: Y308溶加棒、径 2.0 mm
シールドガス: アルゴン(Ar)、15 L/min

実習手順

運棒の基本を平板上で下向き姿勢で練習(溶加材あり・なし共通)
練習 溶接電流(A) 運棒(トーチ)操作 溶接上の注意
ストリンガービード
(前進法)
70〜80 クリックで拡大表示
  • 溶融池の観察が明瞭にでき、容易に作業できる位置取りを行なう

  • 初めに、溶加ワイヤなしで、溶融池を同じ形状に保ちつつ、アーク長は2〜3mm程度で運棒(トーチ)操作をする

  • 次に、溶加ワイヤを供給して余盛の調節を習得する
ウィービングビード
(前進法)
80 クリックで拡大表示

評価確認ポイント

ビード形状が均一か  
 波形が整っているか  
 欠陥がないか  

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2)初層溶加材なしの突合せ溶接

準備するもの

母材 : 材料はステンレス鋼SUS304、板厚3.0×幅約100×長さ約150 mmの平板 2枚
裏板 : なし
開先 : 開先部の寸法とタック溶接 (仮付け)
  • ルート面はバリ取り程度にする。
  • タック溶接は試験板に段差のないように注意して両端で行なう。
溶加棒 : Y308、ワイヤ径2.0 mm
シールドガス : アルゴン(Ar)、15 L/min (トーチシールド・バックシールド)

実習手順/初層溶加材なし

初層を溶加材なしで溶接を行なう。裏波の形成が比較的容易なため入門者に向いている。
層数 溶接電流(A) 積層図 溶接上の注意
70〜80A
  • 初層は溶加材なしで裏波形成させることが重要である(ルート間隔、溶接電流、アーク長)。
    開先の溶け具合から裏ビードの形成を推測すること。

  • 仕上げ層は溶加材を供給して溶融させ、ビード高さ及び幅を調整しながら運棒(トーチ)操作する。
2〜3 70〜80A

注)

溶接変形を抑えるため、溶接による加熱は抑えること

評価確認ポイント

 全体:角変形は少ないか(5度以下)
 表側:ビード形状、波形は良好であり、ビード面が著しく酸化していないか、アンダーカット等の欠陥はないか
 裏側:溶込みは良好で、形状、波形は良好で、酸化はしていないか

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3)基本級 TN-F の溶接/初層溶加材あり

準備するもの

母材 : 材質はステンレス鋼SUS304、板厚3.0×幅約100×長さ約150 mmの平板 2枚
裏板 : なし
開先 :

開先部の寸法とタック溶接 (仮付け)

  • ルート面は0.5〜1.0mmとする
  • タック溶接は治具等を用いて試験板のルート間隔1.0mmを開け、段差のないように押さえてから両端で行なう
溶加棒 : Y308、ワイヤ径2.0 mm
シールドガス: アルゴン(Ar)、15 L/min (トーチシールド・バックシールド)

実習手順/初層溶加材あり

初層を溶加材ありで溶接を行う。確実に裏波を出せるので実用向きである。
層数 溶接電流(A) 積層図 溶接上の注意
70〜80
  • 初層に溶加材ありの場合、溶融池と開先の溶け具合から、溶加棒を調節して供給し、裏ビードの形成をさせる。
    裏波形成はルート間隔、溶接電流、アーク長、溶加材の供給法が重要である。

  • 仕上げ層は、溶加材の供給量を調整して、良好なビード高さ及び幅になるように運棒(トーチ及び溶加材)操作する。

*) 80

注)

溶接変形を抑えるため、溶接による加熱は抑えること

*)特にトーチ操作の難しい仕上げ層についての動画を以下に示す。下の動画では3層溶接となっており、上と溶接条件は異なるが、熟練者のトーチ操作テクニックを参照のこと。
  ティグ溶接では片方の手で溶接トーチ側を操作し、もう片方の手で溶加棒を送給する。良好なビード外観を形成させるため、溶融池の形状に注目して、アーク長とウィービング幅、溶加棒の挿入位置と、棒の送り速度などの連携する操作を会得のこと。

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JIS溶接技術検定シリーズ6「JISステンレス鋼溶接TIG編(TN-F・TN-P)」
(一般社団法人愛知県溶接協会編,産報出版(株))より50秒抜粋 

評価確認ポイント

 全体:角変形は少ないか(5度以下)
 表側:ビード形状、波形は良好であり、ビード面が著しく酸化していないか、アンダーカット等の欠陥はないか
 裏側:溶込みは良好で、形状、波形は良好で、酸化はしていないか

試験結果

検定では以下の試験を行う。

外観検査

表曲げ、裏曲げ試験

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