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銅合金について

 一般的には銅合金鋳物は熱伝導性、電気伝導性がよく、耐食性、耐磨耗性、耐圧性が優れているなどの特徴を持っているが、添加物の相違によってそこに現れる性状は必ずしも一様ではない。例えば青銅系鋳物は耐食性、耐磨耗性、被削性が良いので、バルブ、コックなどに適した合金として、銅合金鋳物の過半を占めている程の生産量を持っている。しかし質量効果が大きいために肉厚部の強度がとれないので高圧用バルブやコックには適さない。つまり銅合金の持つ特徴とその限界をうまく引き出すような使い方をする必要がある。それらの特徴を黄銅系、高力黄銅系、青銅系に関して表1に示した。鋳物用銅合金としてはこれ以外に、りん青銅、鉛青銅、アルミニウム青銅、シルジン青銅、ベリリウム銅、クロム銅などがある。

  1. 黄銅系(CAC200系) Cu-Zn合金に鉛を少量加えたもので3種類ある。ガスや酸化物による欠陥が生じにくい良質の溶湯が得られ、湯流れは良い。安価な製品が得られる。  黄銅鋳物1種(CAC201) はろう付けしやすく、美しい光沢を持っているので装飾用品に使われる他、フランジ類、電気部品などの使われる。黄銅鋳物3種(CAC203)は機械的な性質が良いので給排水金具や一般機械部品、電気部品などに使われる。
  2. 高力黄銅系(CAC300系) Cu-Zn合金にアルミニウム、鉄、マンガンを添加することにより耐海水性、強靭性、耐磨耗性、硬さを増したもので4種類ある。熔解温度が適切であればガス吸収の問題はなく、収縮巣が発生しにくい。比較的鋳造性は良いが、鋳込みに際しては酸化物、特にアルミナ、酸化亜鉛の巻き込を防ぐ必要がある。用途としては舶用プロペラ、軸受、軸受保持器、弁座、摺動部品などに用いられる。
  3. 青銅系(CAC400系) Cu-Sn-Znを基本にしたもので、鉛を含むもの3種と、含まないもの2種にわかれる。鋳肌が美しく古くから砲金として親しまれて来たもので、耐圧性、耐食性、耐衝撃性、軸受特性にも優れている。鋳造性は良いが、質量効果が大きいので砂型鋳物の場合は指向性凝固になるように注意が必要である。用途としては軸受、スリーブ、ブッシュ、ポンプ、バルブなどに使われる。

名称

合金記号
引張り
強さ
伸び

硬さ

高温
強さ
被削性
導電率
耐海水
耐酸
耐アルカリ
耐摩耗性
耐圧製
溶接製






鍛造性
熱処理性
湯流れ性
質量効果性
凝固収縮
黄銅系
CAC201
CAC202
CAC203
4
3
2
1

4
3
2

4
4
3
1
2
3
3

3

3
2
3
2
3
1
2
2
3
1
3
2
1
高力黄銅系
CAC301
CAC302
CAC303
CAC304
1
1
2
2
3
2
1
1
1
2
2
2
3
3
3
4
4
4
2
2
3
3
3
2
2
2
1
1
1
3
2
2
1
1
2
2
3
2
1
青銅系

CAC401
CAC402
CAC403
CAC406
CAC407

4
2
2
3
3

2
1
2
2
2
3
3
2
2
3
2
1
2
2
1
2
4
3
2
2
2
2
3
3
1
1
3
1
2
2
2
1
2
4
4
1
3

表1 銅合金鋳物の機械的特性比較1)


判定基準

1:優
2:良
3:可
4:劣
引張り強さ(N/mm2)
295以上
245以上
195以上
195未満
伸び(%)
20
15
10
10
硬さ(HB)
100
80
50
50
高温強さ(最高使用湿度、K(℃))

573(300)

473(200)

373(100)
373(100)
導電率(%IACS@20℃)
50
30
20
20
耐酸:10%硫酸水溶液中
       

 

1) (社)日本非鉄金属鋳物協会  銅合金鋳物の標準  材料編 (1997)